川辺謙一は鉄道ファンなのか?

川辺謙一は鉄道ファンなのか?

鉄道関係者のみなさまへ

このページをご覧いただきまして、ありがとうございます。

おそらくみなさまは、以下のようなことでお困りであり、川辺謙一に取材や執筆をまかせてよいか迷い、来られたのはないでしょうか?

このようなことでお困りではありませんか?
  • 鉄道関連の取り組みを広く知ってもらいたい
    • 自社の情報発信では限界がある
    • 誰かに客観的事実を伝えてほしい
  • 川辺謙一は鉄道ファンではないか?
    • もしそうであれば、頼みづらい
    • 主観的な記事を書かれては困る

たしかに、取材や執筆を依頼するライターが「鉄道ファン」だと、本人の主観が強く反映され、客観的事実が正確に伝わりにくくなる可能性が高まります。

このため私は、鉄道関連企業の経営者や技術者、広報担当者の方々から「川辺さんは、鉄道ファンではないですよね?」とよく聞かれます。

そこで、この場をお借りしてあらためてお答えします。

川辺謙一は鉄道ファンなのか?

いいえ、ちがいます。

少なくとも仕事においては、私は鉄道ファンではありません。

こう書くと、次のようなご指摘をされる方もいるでしょう。

  • 「いやいや、そんなことないだろう」
  • 「鉄道のライターって鉄道ファンでしょう?」

しかし、私がプロフェッショナルのライターとして活動するときは、鉄道趣味から意図的に離れるようにしています。

なぜか? この記事にその理由を記します。

目次

鉄道趣味の延長では鉄道は語れない

まず、鉄道ファンの方々お叱りを受けそうな結論を書きます。

鉄道趣味の延長では鉄道は語れない」と私は考えています。

なぜならば、鉄道趣味は主観的に鉄道を楽しむものであり、客観性が欠如しているからです。また、鉄道趣味では、鉄道の最重要課題である「安全」の考え方が完全に抜け落ちています。

このため、鉄道趣味の視点に立つと、鉄道という輸送機関の特性や、そこで起きている事実、そして「安全」に関わることを、客観的にとらえることがむずかしくなります。これはとても「危うい」ことです。

このため、私がプロフェッショナルのライターとして活動するときは、鉄道趣味から極力離れ、その視点に立たないようにしています。

こう書くと、「いや、それでも鉄道が好きでしょ?」というご指摘をされる方もいるでしょう。

たしかに、正確に言うと、私が鉄道ファンとしての側面を持っているのは事実です。

鉄道に興味を持ったのは幼少期です。社会人になってからは、鉄道と直接関係がない業種で技術者として働いていたので、鉄道旅行を「趣味」として楽しんでいました。また、SNSでは、鉄道ファンのみなさまに寄り添う投稿をすることがあります。

ただし、私は、メーカー勤務時代に安全教育を受けた経験や、独立から20年以上ライターとして活動したキャリアを通して、鉄道趣味の視点に立つ「危うさ」を感じ、意識してきました。

物事は、主観的にとらえると、先入観にとらわれ、その実態がかえって見えなくなることがあります。

同様に、鉄道は、趣味の観点でとらえると、「鉄道はこうだ」という固定観念にとらわれ、鉄道の全体像や、交通全体における鉄道の立ち位置が見えづらくなります。

だから私は、鉄道趣味から意図的に離れて仕事をしているのです。

「木を見て森を見ず」を避ける

鉄道は、旅客や貨物を安全に運ぶ輸送機関の一種です。また、鉄道は、多くの要素で構成されたシステムであり、それぞれが連動・連携することで、自動車では不可能な大量陸上輸送を実現しています。

私はそのことを拙著『最新図解 鉄道の科学』で記しました。本書では、鉄道をおもに支える土木・機械・電気の専門家(技術者)の協力を得て、自然科学の視点から鉄道の全体像を説明しました。

最新図解鉄道の科学

鉄道趣味は、そのような鉄道を知り、見識を広げる「きっかけ」になります。かくいう私も、鉄道を「きっかけ」にして科学や技術、歴史などに興味を持ち、国内のみならず海外も旅をして、幅広い知識を得てきました。

ただし、鉄道趣味の対象になっているのは、車両など、鉄道を構成する要素のほんの一部です。つまり、鉄道趣味の世界に浸りすぎると「木を見て森を見ず」という状態になり、鉄道の本来の役割やその全体像が見えなくなってしまうのです。

それゆえ、鉄道趣味で得られる知識は、鉄道全体から見られれば「些末」なことにすぎません。車両の種類や路線の名前をたくさん覚えても、鉄道輸送の根幹となる部分は、残念ながら何もわかりません。

私が子どものころは、今よりもはるかに内容が充実した「子ども向け鉄道図鑑」が存在しました。その監修者は、鉄道技術や鉄道史の第一人者で、広い視野で鉄道と社会・歴史・産業などの関係がしっかりと記し、海外の鉄道も紹介していました。

いっぽう現在の「子ども向け鉄道図鑑」のほとんどは、事実上の「車両カタログ」になっています。これらを世に出した出版社や監修者は、鉄道趣味の視点に立ち、「国内の形や色が異なる車両のきれいな写真をたくさん載せれば売れる」と思っておられるのかもしれません。ただ、車両の写真を見くらべても、鉄道という輸送機関の本質はつかめません。

そこで私は、鉄道の全体像を自然科学の視点で見渡せる入門書として、先述した『最新図解 鉄道の科学』を書きました。これは、「車両カタログ」と化した「子ども向け鉄道図鑑」を元のかたちに戻すための、ささやかな抵抗でもあります。

こうした事実を理解している鉄道のライターが、果たして現在の日本にどれだけいるでしょうか?

少なくとも私は、そのような方のお名前を挙げることはできません。

お聞きするきびしいご意見

残念ですが、これが日本のマスメディアの現状です。日本では、他国とくらべて鉄道趣味が特異的に発達した結果、輸送機関としての鉄道が誤解されやすくなったと、私は感じています。

そのことは、鉄道関係者のみなさまもお気づきでしょう。

実際に私は、鉄道事業者の経営者や技術者、広報担当者から、次のようなご意見を聞いてきました。

  • 鉄道事業者にとっては、鉄道に興味を持つ人が増えることはありがたい。ただし、本や記事で誤った情報を拡散されるのはたいへん困る
  • われわれ鉄道事業者は「安全」に心血を注いで取り組んでいる。それを理解せず、趣味人のイメージだけで語っている本や記事があまりに多すぎる

いっぽう、出版社の編集者からは、次のようなご意見を聞いてきました。

  • ウェブメディアの発達で鉄道ライターが増えた反面、客観性を持って執筆できる鉄道ライターがほとんどいない
  • ファクトベースで鉄道を語れないライターは、正直いらない

これらのご意見は、いずれもごもっともです。

鉄道の本質を知る2つの取り組み

このため私は、次の2つに取り組んできました。

  • (1)鉄道を支える現場を知る
  • (2)外側から鉄道を俯瞰する

(1)の「鉄道を支える職場を知る」は、鉄道で起きているリアルな状況を把握するための取り組みです。

私は大学や大学院で工学を学び、メーカーの工場や研究所で技術者として働き、安全教育を受けた経験があります。

ただし、鉄道現場での実務経験はありません。

このため、鉄道関係者のみなさまのご協力を得て、鉄道を支える現場や人を取材して、不足していた知識や経験を補うことに注力してきました。

体験しないとわからないことがある
電気機関車の運転体験
電気機関車の運転体験
蒸気機関車の整備体験
蒸気機関車の整備体験

また、身体が汗や油、煤、泥、埃でまみれても、鉄道を支える現場に行き、場合によっては一部の作業を「体験」して、五感で知ったことを、読者の方にお伝えしてきました。

電気機関車の運転を「体験」したら、ブレーキが思うようにきかず、ヒヤリとする。下り坂で発電ブレーキが失効し、あわてて空気ブレーキを操作したら、雨で動輪が滑る。即座にレールに砂をまいてブレーキ力を上げたら、総重量100トンを超える巨体がガクンという衝撃ととも急停車して、添乗していた人が倒れそうになる。

真夏に作業服を着て蒸気機関車の整備を「体験」したら、顔が煤だらけになる。石炭を燃やす火室の内部を見せてもらったら、光と熱で顔が焼けるような思いをする。作業後は汗だくで喉はカラカラ。ペットボトルに入ったスポーツドリンクを喉に流し込んでも、飲んだ気がしない。

以上は、作業を「体験」してみて初めてわかったことの一部です。日々これらの作業に向かっておられる方々には頭が下がります。

(2)の「外側から鉄道を俯瞰する」は、日本の鉄道をとりまく環境を把握するための取り組みです。

自動車や航空機、船舶といった他の輸送機関の強みと弱みをそれぞれ知り、交通全体における鉄道の立ち位置を把握する。鉄道整備の背景にある都市計画や国土計画を知り、鉄道に課せられた役割を把握する。海外の鉄道を利用し、鉄道関連の国際的な会議や展示会に足を運び、日本の鉄道の立ち位置を把握する。

こうしたことを繰り返した結果、日本の鉄道の立ち位置が少しずつ見えてきました。

国際的な展示会や会議の取材
イノトランスに行った川辺謙一
イノトランス(国際鉄道技術専門見本市)ドイツ・ベルリン
UIC国際高速鉄道会議
UIC(国際鉄道連合)国際高速鉄道会議

だから私は鉄道ファンではない

このような活動を続けた結果、「鉄道趣味の延長では鉄道は語れない」と痛感しました。先ほども述べたように、鉄道趣味の対象になっているのは、鉄道を構成する要素のほんの一部です。そこで得た知識だけで、鉄道の全体像を語ることは、残念ながら不可能です。

このため私は、鉄道趣味から離れて、仕事をしています。

以上のことから、あらためて申し上げます。

川辺謙一は鉄道ファンなのか?

いいえ、ちがいます。

少なくとも仕事においては、私は鉄道ファンではありません。

先ほど述べたように、鉄道ファンとしての側面を持っているのは事実です。それゆえ、プロフェッショナルのライターとして活動するときは、鉄道趣味の観点から意図的に離れています。

また、現在は自家用車や航空機などの他の移動手段の快適性や利便性を享受しているので、プライベートでは鉄道を若干冷ややかな目で見ています。

某鉄道会社の副社長(当時)は、私を「鉄道ウォッチャー」と呼んでくださいました。鉄道とほどよい距離を保ちながら、その現状を観ている点では、そう呼べるかもしれません。

某出版社の顧問(当時)は、「川辺さんの本を読んで、この人は鉄道ファンでないと直感したから、執筆依頼をした」と言ってくださいました。同様に直感し、お問い合わせをしていただいた企業の方は多数おられます。

以上のことを鉄道関係者の方々にお話しすると、たいてい安心され、取り組みなどをていねいに説明してくださいます。

鉄道関係者の方のなかで、以上のような活動にご興味をもっていただける方がおられたら、以下のメールフォームでご連絡いただけるとうれしいです。


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